アキュフェーズ E-700を視聴してみた

透明感の中に“芯”がある—E-700の音は語りかけてくる

アキュフェーズのEシリーズといえば、国内外で長年にわたり高い評価を受けているプリメインアンプの定番。その中でも2023年登場の「E-700」は、前作E-650からの正常進化として登場し、注目度の高い1台です。

今回、販売店の試聴室でじっくりとE-700を聴く機会がありました。スピーカーはB&Wの800シリーズ、音源はSACDとハイレゾファイル、そしてクラシック、ジャズ、ボーカル中心の内容で比較しました。第一印象は、「音が静か」。そして「芯があるのに硬くない」。一言で言えば、音に品があるアンプです。

E-700の目玉のひとつは、アキュフェーズが誇る「AAVA方式ボリューム」。可変抵抗を使わず、音量を“劣化なし”で制御できる独自技術です。これが確かに効いていると感じたのは、小音量時の繊細な音の変化が崩れず、情報量が保たれている点でした。背景の静けさの中に、ピアノの余韻がしっかりと“浮かび上がる”感じがします。

音楽ジャンルを選ばず、“空間”ごと描く再現力

特に印象的だったのは、ジャズトリオのライブ音源を聴いたとき。ベースはふくよかで輪郭がはっきりし、ピアノの打鍵とペダルの空気がリアルに伝わってきます。ハイハットやブラシのニュアンスも潰れることなく、定位がピタリと決まるのが心地よい。E-700は音を“並べる”のではなく、“描く”タイプのアンプだと感じました。

クラシックの室内楽でも、その丁寧さは健在です。ヴァイオリンとチェロの距離感、ホールの広さ、響きの方向までが自然に再現され、あたかも楽器ごとに照明が当たっているかのようにくっきりと浮かび上がります。

また、あえて女性ボーカルの録音で比較すると、声の質感にクセが出ず、録音の良し悪しをそのまま反映してくれる傾向もありました。柔らかくまとめるアンプとは違い、E-700は誇張も飾りもせず、録音に忠実。それでいて、どこか温度感があり、冷たさは感じません。

機能性と所有感を両立した“大人のアンプ”

操作性にも触れておきたいポイントがあります。E-700のフロントパネルはクラシカルなアナログメーターを中心に、必要最小限のスイッチで構成されています。表示は明快で視認性が高く、リモコンの質感も高級感があります。

機能面では、左右チャンネルのバランス調整やトーンコントロール、ラウドネス補正など、アキュフェーズならではの「高音質でありながら、実用性の高い操作」がしっかり搭載されています。プリアンプ出力/パワーアンプ入力の切り替えも可能で、将来的なシステム拡張にも柔軟に対応できる設計です。

また、別売のDACボード(DAC-60)やフォノボード(AD-60)を増設することで、ハイレゾ対応やアナログ再生まで幅広くカバーできます。基本性能がしっかりしているので、シンプルな構成でも完成度が高く、それでいて将来への“余白”も用意されている。このバランスは、長く使いたくなる要素のひとつだと感じました。

E-700は、音に鋭さを求める人にも、しなやかさを求める人にも応えてくれるアンプです。重心は低めだけれど、上もスッと伸びている。その音の設計は、とても日本的な“抑制の美学”を感じさせます。

価格的には簡単に手が届く存在ではありませんが、「一生モノ」として付き合うには十分すぎる完成度。何より、音楽の余韻を“丁寧に受け止めてくれる”アンプというのは、そう多くないと思います。

音楽と静かに向き合いたい。そんな時間を大切にしたい人には、E-700という選択肢はとても魅力的に映るはずです。