ハイレゾ配信は“所有”から“体験”へ進化している
かつてハイレゾ音源といえば、専用サイトから音源ファイルを購入し、PCやDAPに保存して再生するのが一般的でした。しかし現在は、ストリーミングサービスの進化によって、ハイレゾ音質のまま“聴き放題”で楽しめる環境が整いつつあります。
手間をかけてダウンロードしたり、ストレージ容量を気にしたりする必要がなくなったことで、音質を妥協せず気軽に音楽を楽しめる時代がやってきたのです。
もちろん、サービスごとに対応フォーマットや再生条件、楽曲ラインナップに違いがあります。ここでは主要なハイレゾ対応ストリーミングサービスを比較しながら、それぞれの特徴と選び方のポイントを解説していきます。
Amazon Music Unlimited:コスパ重視で幅広く楽しむ
Amazon Music Unlimitedは、ハイレゾ音源を「HD」「Ultra HD」として提供しています。最大24bit/192kHzという高音質にも対応しており、楽曲数も1億曲以上と豊富です。
とくにAmazon Echo Studioなどの対応デバイスを使えば、Dolby Atmosや360 Reality Audioといった立体音響フォーマットも体験できます。スマートスピーカーとの連携を重視する方や、音質と利便性を両立させたい方にとっては非常にバランスの取れた選択肢といえるでしょう。
月額料金は個人プランで1,080円(プライム会員)と比較的リーズナブル。専用アプリでハイレゾ再生が可能ですが、ロスレスやハイレゾ再生には対応機器や環境(有線接続など)が必要です。
Apple Music & TIDAL:音楽体験に深さを求めるなら
Apple Musicは2021年からロスレス&ハイレゾロスレス音源の提供を開始しました。ALAC形式で最大24bit/192kHzの再生が可能で、iPhone・Macユーザーにとってはアプリとの統合性が高く、UIの洗練度も魅力です。
AirPodsなどではロスレス再生に制限がありますが、有線イヤホンやDACとの組み合わせで高音質再生が可能です。また、空間オーディオやDolby Atmos対応音源の豊富さもApple Musicの個性といえるでしょう。
TIDALは欧米で人気の高いサービスで、MQA(Master Quality Authenticated)という独自技術を用いてハイレゾ音源を効率的にストリーミング配信しています。よりオーディオマニア向けの印象が強く、対応機器や再生環境が整っていれば、非常に高品位な音楽体験が可能です。
mora qualitasの終了後、次に選ばれる国内サービスは?
日本発のハイレゾストリーミングサービスとして注目されていた「mora qualitas」は、惜しまれつつ2022年にサービス終了となりました。その後、日本市場でハイレゾ配信を担うサービスとして期待されているのが「LINE MUSIC」や「Rakuten Music」ですが、いずれも現時点ではCD品質までの対応となっており、純粋なハイレゾ配信とは異なります。
その点、グローバル展開しているAmazon MusicやApple Musicが日本国内でも主軸となっており、楽曲ラインナップやUIの使いやすさ、対応機器の多さという面で非常に優位に立っています。
これからハイレゾストリーミングを始めたい方にとっては、「自分の使っているスマホ・デバイスとの相性」と「使い勝手」を重視してサービスを選ぶことが、長く心地よく続けるためのコツといえるでしょう。
ハイレゾ配信は単に“音質が良い”というだけではなく、音楽の風景そのものを感じるような深い体験をもたらしてくれます。手のひらの中でそれを味わえる今、音楽との距離は確実に縮まっています。